社労士Q&

 

  Q3. 社会保険法関連

 社会保険の算定基礎届についての質問です。

昨今の業績から見て、このまま事業を継続していくことはとても厳しい状況です。弁護士にはまだ相談していませんが、会社解散等の方向で検討しています。

 この場合、算定基礎届における起算点71日にどうなっているか? 現状ではわかりません。6月末までに解散等しているのであれば届け出の必要性はないと思いますが、71日から10日の間に解散が決定すれば、当該届出はどうすればよいのでしょうか?

 A3

 算定基礎届は、原則として当該年度の71日〜10日の間に提出する必要があります。その対象労働者は71日時点における被保険者等です。(61日〜30日の間に資格取得した被保険者は除きます)

 これから考えると、例えば解散日が77日である場合、71日時点ではまだ事業を継続しているわけであり、その時点のデータとして当該届出をする必要があるように思われます。

 しかし、算定基礎届はあくまでも対象労働者の9月からの保険料を決定するための基礎資料にするというのが目的のひとつです。そうすると、77日に法人が解散されれば、当然に9月の時点においてその法人は存在せず、ひいては被保険者等も存在しないわけですから、算定基礎届を提出する意味はないといえます。

 

 ただし、事例のような場合には、適宜年金事務所等との連絡を密にし、後処理に当たってください。

 

 

 Q2. 労働法関連

 フレックスタイム制を適用している社員に対し、業務の都合上、どうしてもフレキシブルタイムである時間帯(始業時刻に合わせて)に出勤させる必要が生じた場合、出勤を命じることは可能ですか?

 もし当人がフレキシブルタイムを盾にその命令を拒んだとしても、会社としてはそれを受け入れるしかないのでしょうか?

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 この点については、次のように考えることができます。

1)         フレックスタイム制は企業内の一つの勤務方法であり、本来的には始業・終業時刻を順守した定型的勤務をすべきところを、労基法の定めに従い、労使協定等の手続を整え、就業規則に定めることによって認められるものである。よって、当該制度は業務遂行方法の一形態といえる。
 そこで、当該制度適用労働者であっても、誠実勤務義務や職務専念義務があり、フレキシブルタイムに行われる重要な会議等の時刻に遅れてもよい、ということにはならない。

2)         使用者の労務指揮権の行使として、一時的・臨時的に、勤務時刻指定が必要な日には、当該フレックスタイム制度を適用せず、あらかじめ労使協定で定める事由、手続等により通常の勤務を命ずる方法をとる。

3)         あらかじめ対象労働者の同意があればよい。これには、通常の始業時刻勤務を命じ、当該対象労働者が異議を述べずに命令時刻より勤務を始めるという黙示の同意も含まれる。

ここから考察すれば、使用者はフレックスタイム制度適用労働者に対しても、通常の始業時刻からの勤務を命じることは可能であり、もし当人がそれをフレックスタイム制度適用を盾に拒んだ場合においは、業務遂行に支障を生じさせたことに該当し、企業規律・秩序違反として懲戒処分の対象になり得る、と考えられます。


(参照 : 『トップ・ミドルのための採用から退職までの法律知識』十二訂 
 弁護士 安西 愈 著)

 

 

 Q1. 労働法関連

年俸制導入を検討しています。事前に注意することはありますか?

1. 

 年俸制であっても、法定労働時間を超える時間外労働等があれば、原則として時間外労働手当等割増賃金が発生します。この場合に特に注意が必要なのは、たとえばあらかじめ賞与分も含めて年俸額を決めている場合です。

 よくあるのが、1月当たりの給与16か月分を年俸金額、としているとき。

 (12か月分と4カ月分のボーナス分を含む)

 

 原則としてボーナス(1か月を超える期間ごとに支払われる賃金)は割増賃金計算の基礎には含まれません。しかし、上記のように“あらかじめその金額が「確定」(4カ月分の支給)”している場合は、割増賃金計算の基礎に含める(平成12年3月8日78号)といった行政通達がありますから、その点は年俸額を決めるときに考慮して下さい。