フロー理論


Q1. フロー理論とは何ですか?

A1. 

 ヒトは“フロー状態”にあるとき、その能力を最大限に発揮し、パフォーマンスが最大化する、という理論。スポーツ選手などによくみられる状態、といわれています。



Q2. フロー状態とは?

A2.

 一つの状態に没頭しているので、他の何ものも問題とならなくなる状態。

その経験それ自体が楽しいので、純粋にそれをする、ということのために多くの時間や労力を費やす状態のことです。



Q3. もう少し具体的に

A3.

 記憶されている方も多いと思いますが、今年2010年のウインブルドン大会。

 
ジョン・アイズナーとニコラマウーに1回戦は、ファイナルセット第138ゲームにて決着。試合時間はゆうに10時間を超えました。

 この、観戦者にもかなりの疲労感、充実感を覚えさせたであろうゲームの当事者2名。これはあくまでも私見ですが、彼らはゲーム中、フロー状態であったと考えています。
他に懸念すべき事柄などなく、ゲームだけに没入し、勝つという成果を得るためだけにその持てる精力を注ぎ込む。サーブ&ボレーが、長いラリーが楽しい。体は疲弊しているものの、その反面、頭と心は当該ゲームを心より楽しんだのではないでしょうか。



あるいは、もう少し身近な例をあげると、受験勉強や資格試験受験に向けての日々の勉強において、ある瞬間から目にする文字や数字、記号以外は一切頭の中から除外され、夕食の献立や銀行振り込み、数日中には仕上げる必要のある企画書や研究レポート、ダメかもしれないという恐怖心等々がきれいさっぱり消失している、そんな状態。


今自分がしていることにだけ全てを集中し、それ以外には何ら憂いを感じない。

日常的な出来事であれ、物事にとことん集中して取り組んだ経験があれば、アナタもすでにフロー体験を経験しているのではないでしょうか?


特別に意識するからこそ経験できる、といった類のものではないといえます。


※8つの構成要素
シカゴ大学心理学科教授チクセントミハイは、その著書「フロー体験 喜びの現象学」にて、楽しさの要素(最も生き生きした経験をしているときの感じ)として、次の8つを上げています。


1) 達成できる見通しのある課題に取り組んでいる。

2) 自分のしていることに集中できる。

3) 行われている作業に明瞭な目標がある。

4) 直接的なフィードバックがある。

5) 意識から日々の生活の気苦労や欲求不満を取り除く、深いけれども無理のない没入状態で行為している。

6) 楽しい経験は、自分の行為を統制しているという感覚を伴う。

7) 自己についての意識は消失するが、これに反してフロー体験の後では自己感覚はより強く現れる。

8) 時間の経過の感覚が変わる。(数時間は数分のうちにすぎ、数分は数時間に延びるように感じられることがある)


ポイント
・イギリス海峡を横断中の長距離泳者とチェスプレイヤーが対戦中に感じたことや、難しい岩壁を登るクライマーの感じたことはほとんど同じ。つまり、どんな活動であれ、それがうまくいっている時の気持ちは同様である、といえそうです。


もちろん、全てがうまく進むわけではありません。それでも、フロー体験に至るまでの動機づけが何なのか? を知ることは意義があると思います。それが次のQ&A。


Q4. フロー理論における内発的報酬とは?

A4.

 賃金や罰則等といった外発的報酬とは違い、内発的報酬とは「充実感」「達成感」「楽しい」といった、自身の内側から自然にこみあげてくるものを指します。


アナタは今、その仕事を楽しいと感じておられますか? 

部下に与えたその仕事を、彼らは楽しいと感じているでしょうか?

 

 

チクセントミハイはいいます。

「楽しさは何をするか、によるのではなく、むしろどのようにするか、によって決まる」

 

 

私論ですが、氏の言葉を簡単に表現したものが、次のページともいえます。

 

 

エンプロイアビリティを身につける> 

〜単純な皿洗いを意識の変化で「楽しさ」にする。

 

 

世界の注目を浴びるようなテニス大会でのゲームでも、日々当たり前のこととして行われている事務処理であっても、目の前の課題をどのように捉えるかによって、フロー体験は経験できるのではないでしょうか。