解雇は慎重に
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平成16年1月1日より平成15年改正労働基準法が施行されました。「解雇規制の明文化」「有期労働契約の期間延長」「裁量労働制の要件緩和」等、改正が行われましたが、中でも一番の注目はやはり「解雇規制の明文化」ではないでしょうか。
労働基準法第18条の2
「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする」
上記が、新たに追加された条文です。
この条文は、整理解雇・普通解雇・懲戒解雇すべてに適用されます。
新設された規定は、最高裁判所判例として確立されていた「解雇権濫用法理」を明文化したものです。
1. 日本食塩製造事件(最判昭和50年4月25日民集29巻4号456貢)
2. 高知放送事件(最判昭和52年1月31日労判268号17貢)
これらの判例により確立されたとされます。
では「社会通念上相当である」とはどういうことでしょうか? 2.の高知放送事件を例に考えて見ましょう。
(1)事案
X社に勤務するアナウンサーAが宿直勤務において、2週間に2度、寝過ごしてしまったために、10分間の朝のラジオニュース(1度目は全部、2度目は5分間)に穴を開けてしまいました。Aは自分の非を認め反省しましたが、会社はAに対し解雇を通告しました。Aはこの処置に対し、解雇権の濫用であるとして、会社の従業員としての地位確認請求を行いました。
なお、2度目の事故の際に、Aとともに寝過ごした記者Bに対しての処分は「譴責」でした。
(2)最高裁判所
2週間に2度も同一態様の事故を起こしたことはアナウンサーとしての責任感に欠けるといえる。しかし、これらの事故は当人の悪意ないし故意によるものではなく、また記者Bも寝過ごしており、当人のみを責めるのは酷なことである。特に2度目の事故のおりに一緒に寝過ごした記者Bは譴責に処せられたに過ぎないこと、Aはこれまで放送事故もなく勤務成績も悪くはない。会社で以前に放送事故で解雇されたものはいないことやAも自分の非を認め反省していることなどからして、Aに対し解雇を持って臨むことは、いささか酷にすぎ、必ずしも社会的に相当なものとして是認することはできない。
(3)結論
これは懲戒解雇の事例ですが、裁判所は行為態様のほか、その行為にいたった原因、動機、状況、結果を考慮するとともに、行為者のその前後における態度とか、処分歴、当該行為がほかの社員に与えた影響など諸般の事情を総合的に考慮して、懲戒解雇にすることがやむを得ないと判断した場合にのみ、是認していると言えます。
懲戒処分が譴責、減給、出勤停止など懲戒解雇ではなくそれよりも軽い処分を適用すべきであるにもかかわらず、有無を言わさずに懲戒解雇にする場合はいうに及ばず、できうる限りの解雇処分回避の可能性をまずは考えるべきでしょう。
この場合に、就業規則に「解雇」「懲戒の種類」「懲戒の事由」が明記されていることは、必要不可欠になってくると考えます。ただし、就業規則に明文化されていて、それに当てはまる事由が生じたとしても、即有効な解雇になるとは限りませんので注意が必要です。
解雇に関し紛争になった場合、事業主と従業員のどちらに立証責任があるか?
→実際の裁判実務においては、事業主に立証責任があるとされています。これは、双方を比較した場合、やはり、事業主のほうが解雇にいたった経過等の情報量が圧倒的に多いと考えられますから、当然のことといえるでしょう。
今後、解雇をめぐる紛争は増加すると考えていいでしょう。ですから、その予防として労働協約・就業規則・労働契約に関しては、より慎重な姿勢で臨むべきではないでしょうか。
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