コンプライアンス



1.コンプライアンンス                               
2.ひとつ事例を書いてみましょう                        
3.企業倫理




1.コンプライアンス。


この言葉は多くの方がご存知でしょう。よくは知らないけど、聞いたことはあるよ。こういわれる方もおられるのではないでしょうか?


多くの場合、「法令順守(遵守)」と訳されています。確かにそれは正しいでしょう。


では、社会保険労務士いわゆる士業として、たなか社会保険労務士事務所は事業主の方にどういったことを提供できるのか? こう考えた時、
「法律ではこうなっています。それは法令違反です。法律は守りましょうね」
こういったありきたりのアドバイスを、事業主の方は果たして求めているのだろうか? といった疑問が湧いてきました。


もちろん、法令順守の精神は士業である限り、強く意識しなければなりません。


しかし、これだけ情報が溢れている時代です。その気なれば最低限の情報を得ることは難しくないでしょう。


ただし、その情報が果たして各人・各組織が抱えている事例にピッタリあるいはほぼ該当するのならよいのですが、そうそう都合のよい情報が見つかるとは限りません。


また、これまで何事もなく処理してきたことであっても、「本当に法令に沿った対処方法なのだろうか?」といった疑問を抱えておられる事業主の方もおられます。


そういった方々に対し、士業としてどういったアドバイスができるでしょうか?


当然、法令違反か否かはお伝えします。しかし、全ての事象に対し、網羅的に法令が張り巡らされているわけではありません。


既存の法令にしても、強行規定といった必ず遵守すべき法令もありますし、任意規定という当事者間で違った見解を示せば、その意見の方が法令よりも尊重される、といった法令もあります。


あるいは、法令が想定していない事柄も起こりえますし、実際起こっています。いわゆる法律が時代に後れている、といわれる部分です。


大体、全てのことを事前に考慮して法令を制定する、なんてことは不可能です。ですからどうしても
グレーゾーンは生じてしまうのです。


どうでしょう? このグレーゾーン。たぶん、インターネットで検索しても、見つけ出すのは非常に困難だと思います。


「これだよっ!!」



士業としてはこのグレーゾーンをどう判断できるか? ということが大切です。事業主の方にとっても、こういった部分の判別は出来かねる場合が多いでしょうから、ここに士業の存在価値を集中させる必要性があるのでは? と思います。


もっとも、士業といえども全ての法令に精通しているわけではありません。現在、わが国には1,000以上もの法令がありますから、納得していただけるでしょう。


しかし、当然に日々自己研鑽に励む必要がありますし、そういった努力をしなければなりません。


が、やはり限界も生じますから場合によっては即答できないことも出てくるでしょう。しかし、士業を名乗る以上、切り口は持っているものです。即答できるもの、少しの時間を要するもの、行政の見解を確認した方がよいもの。


この行政に聞く、という行為ですが、本来的には誰でも出来ます。しかし、ポイントをついた質問というのは難しくありませんか? こちらの思惑とどうもズレているような気がする。こういった経験をされる方も少なくないでしょう。


この場合、心理的に「もういいや」となってしまい、肝心の部分を聞き損ねたという結果もありえます。そんな時、士業を利用してみよう。こう思ってもらえれば嬉しいですね。


十分に話をお聞きし、その上で確認を要すると判断すれば士業も行政に訊ねますが、当然聞くべきポイントを外さず、スムーズに対応できます。これも士業を利用するメリットです。


ただし、士業といえども明確な回答ができる、とは言いがたいのも事実です。士業が完璧な回答ができれば、そもそもそれはグレーゾーンではありませんから。


ですから、「より薄いグレー」なのか「かなり濃いグレー」なのか、そういった判断をするしかないジレンマを抱えますが、そういった判別もやはり「一種の付加価値になりえる」と、当事務所は確信しています。



                        



2.ひとつ事例を書いてみましょう


 A店は、一月後に開店を控えた小売り屋さんです。開店に備えパートさんたちを採用しようとしています。雇用契約は開店日から交わすつもりです。しかし、開店直後は開店セールを実施することもあり、かなりの混雑になると予想しています。


そこでA店側は、オープン前にパートさんたちに対し開店に向けた研修を行おうと考えました。しかし、ここでA店のオーナーは悩みます。


雇用契約はあくまでも開店日からだ。この場合、開店前の研修期間中の賃金は払うべきなのか?

オーナーは交通費と昼食代は払ってもいいと考えています。もし日当を支払わないことが法に抵触するのなら払ってもいいとも思っていますが、さて、どうしたものか?


こういった疑問はありえますよね。というか、こういったことを意識したことはないという方も多いかもしれません。日々、これは適法か? なんて考察しながら生活するなんて窮屈極まりない、ですから。


でも、これは素朴でも、考える価値のある疑問です。法的にグレーゾーンにかかる問いかけなのです。


この疑問に対し、士業としておおよその見解は述べることが出来ます。しかし一度行政側にも確認すべきだろうと判断しました。


ポイントを外さずに訊ねます。行政側の回答はおおよそ以下のようなものでした。


「まず労災の問題がありますね。もしその研修期間中に事故が起こった場合、労働者性が判断されます。一概に言えませんが、研修期間中でも労働者性が認定される可能性はあります。そうすると、この研修期間中の事故は労災の対象となりえます。しかし、実際には開店後に労災加入申請するつもりですよね。でもね、もし労働者が労災の適用を訴えたら、事業主は未加入期間だから、といった言い逃れができないかもしれません。その場合は、特別保険料を支払うことで遡及適用になるだろうけど、この特別保険料は割高だし、その後事業所に指導に入るということも考えられます」



「次に賃金の問題ですね。やはり無給ということは認めがたいですね。もちろん、通常の時給よりも安くすることはかまわないですが、それでも双方が同意していることは必要です。できるなら、雇用契約書で試用期間を設ける等の対策を施すのがよいのでは?」



「研修を強制する場合も問題ありです。あくまでも雇用契約を開店時にするならば、研修は任意ですることですね。研修を拒絶したから雇用契約を破棄する、といった措置は避けることです」



こういった見解は、たしかに最悪の場合、例えば事故が起こった・労働者の能力が予想以上に低く、それゆえ解雇した、などを想定しています。


しかし、可能性は「0」じゃない。


結果、この場合は「かなり濃いグレー」と判断してもいいでしょう。ただし、厳密に法違反ではないのも事実です。ですからこういった助言を踏まえたうえで、当初の予定通り、という事も考えられます。



最終決定者は事業主ですからね。


もし当事務所に訊ねられたら? 
「中長期的に考察する」ことをお勧めしますね。


事業を成功させるには、「社会的責任」を避けて進むことは不可能でしょうから。



                   



3.企業倫理


昨今、倫理観が欠如した事件が頻発しています。しかし、突然増加しているのではなく、これまで水面下で極秘裏に処理されてきたものが白日の下に曝け出されるようになった。こう考える方が的を得ていると思われます。


「自社の利益さえ確保できればいい」
資本主義社会ですから、真っ向から否定することは出来ないかもしれません。しかし、企業は「社会のもの」でもあります。


経営者、従業員の私物ではなく、社会全体のものです。
いかにして社会に正しく貢献することができるか?


こういった理念なく、独自の経済性のみを追求することが許された時代は、既に終焉しているといってよいでしょう。


時代は常に変革する。多くの事業主の方は知っておられます。しかし、過去の遺物それもとても居心地のよい環境をそう簡単に捨て去ることに対しては勇気がいるでしょう。


ですが、現在はいかに素早くその勇気が持てるか、が試されているのです。


「問題は先送り。聞かなかったことにする」
「俺に逆らう輩は近づけるな。周囲はいつも素直なイエスマンだけでいい」


こういった考えに固執する気持ちもわからないでもありません。しかし、経営環境は変わっています。今後も変わっていきます。ですから、客観的に動向を見れる「冷静な眼」が必要です。その役割を、当事務所は果たします。



たなか社会保険労務士事務所
                                  

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